どこにでも、誰にでも、有った、そして在ったこと

いけちゃんとぼく

小さい弟が生まれて、そして小さい弟が育って行って、彼が今17歳になって、その間にワタシが忘れかけていたことを、8月に生まれた娘とこの本が思い出させてくれた。

もう二度と忘れないようにしようと、そう心のメモ用紙に書き留めてはみるものの、鉛筆の芯がこすれて薄くなるように、ボールペンのインクが退色していくように、きっとまたワタシは忘れてしまうんだろう。

ワタシは、忘れたいと願う子ども時代を過ごして、そうして本当に自分が子どもであった時代のことを忘れてしまった。だからダンナが子ども時代の話をしているのを聞くと、悲しいような鬱陶しいような、多分それは嫉妬であるような、そんな感情がわき上がってきて、素っ気ない態度を取ってしまう。

娘にはそんな想いをさせないように、せめて娘が成人するまで健康でいたいと、眠る娘の顔を眺めながら、雨の音を聴く日。